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カワラナデシコの育て方と栽培レポート!長期維持のコツ

雨に濡れたカワラナデシコ 栽培レポート

カワラナデシコについて、栽培事例をご紹介します。私の場合の育て方や、四季の様子、育てた感想等をまとめます。これから育てたい方や、既に育てている方の参考になれば幸いです。

カワラナデシコは梅雨時から晩夏にかけて華憐な花を咲かせる和の宿根草です。栽培のポイントは株を更新することです。寿命が3年ほどと短いため、長期的に維持するには後継株を増やしながら育てます。

この記事ではカワラナデシコの栽培情報と、近い仲間として、登山中に出会った野生のタカネナデシコとシロバナタカネナデシコの様子もご紹介します。

カワラナデシコの特徴

カワラナデシコの開花風景
(6月中旬 自宅の庭)見頃を迎えたカワラナデシコ

カワラナデシコは河原や明るい草原に自生する原種のナデシコです。日本の在来種で、秋の七草の一つにも選ばれている馴染み深い花です。花はピンクが一般的で、白や淡いピンク等の個体もあります。別名はヤマトナデシコ(大和撫子)で、単にナデシコと言う場合は本種を指します。身近な草花ですが、地域によっては絶滅危惧種に指定され、野生個体は減少傾向にあります。自生地である草地や河川の開発、盗掘、外来種との競争、人間の生活スタイルの変化等が影響を与えていると言われています。生育には明るい環境が必要なため、定期的に草刈りが行われる里山が減ってきた事も要因ではないかと思います。

ナデシコ属の仲間は、在来種のエゾカワラナデシコ、タカネナデシコ、ハマナデシコ、中国のセキチク、ヨーロッパのタツタナデシコ等多くの種類があります。園芸種では、カーネーションを含むダイアンサス類、伊勢ナデシコ等、その他多数の交配種が知られています。

一般にカワラナデシコとして販売されているのは厳密にはエゾカワラナデシコである事が多いようです。見分けるには、がく筒(花弁の下にある緑の筒状の部分)の基部についた苞(ほう)の数を見ます。苞が2対ならエゾカワラナデシコ、3~4対ならカワラナデシコです。私の栽培個体は、基本的に苞が2対(稀に3対)でエゾカワラナデシコだと思いますが、この記事では便宜上、カワラナデシコとして扱っています。

基本データ
学 名Dianthus superbus var. longicalycinus
分 類ナデシコ科 ナデシコ(ダイアンサス)属
形 態常緑多年草
原産地日本、アジア(朝鮮半島、中国、台湾)
大きさ高さ30~80cm、幅30~40cm
開花期6~9月
花 色ピンク、白
日 照日当り
水 分普通
耐寒性
耐暑性
増やし方挿し木、株分け、実生
用 途庭植え、鉢植え、草物盆栽
カワラナデシコの基本データ

わたしの育て方

カワラナデシコとの付き合いは長く、10年に渡り栽培しています。2012年より育て始め、挿し芽と種撒きで更新しながら維持してきました。栽培当初はベランダの鉢植えで、現在は庭植えにしています。

栽培環境

日当りと風通し、水はけの良い環境を好みます。

私は庭の二か所に分けて栽培しています。一か所目は南面の日当りで、矮性のキキョウや背の低いグラス類と一緒に植えています。二か所目は北面の半日陰で、夏は直射日光が当たり冬はほとんど当たらない場所です。こちらではスミレ類、西洋サクラソウ等と混植にしています。

水やり

よっぽど乾燥しない限りは水やりはしていません。比較的水切れに強いように感じます。

肥料

春に緩効性肥料を少量与えています。

病気・害虫

害虫はクロウリハムシがつく事があります。大きさ6mm程の小さな虫で、背中が黒く、お腹が黄色いのが特徴です。開花期にあたる6月から9月頃に現れ、花や蕾をムシャムシャと食べてしまいます。人の気配に敏感なのか、近づくと飛んで逃げていきます。ウリ科の野菜に集まる害虫ですが、ナデシコの他にキキョウにも来ます。

お手入れ

後継株の増殖作業をメインに行っています。私は夏から秋にかけて種を採取して取り撒きしています。種まきの適期は春と秋です。

冬は枯れ込んだ茎を切り取ります。

四季の生育状況

春の様子(3~5月)

暖かくなると越冬した芽が成長を始めます。株元から分岐して複数の芽が伸び、葉を出しながら茎が立ち上がってきます。5月の後半には蕾が確認できます。

夏の様子(6~8月)

雨に濡れたカワラナデシコ
(6月中旬)水滴のしたたるナデシコの花

梅雨に入る頃、開花期を迎えます。花弁に切れ込みが入り繊細な印象です。この個体は通常より花色が濃いように思います。

淡いピンクのカワラナデシコ
(6月中旬)淡いピンクの花を咲かせたカワラナデシコ

栽培当初はピンク一色の花でしたが、実生を繰り返した結果個体差が生まれ、白や淡いピンクの花も咲くようになりました。原因は分かりませんが、花粉が運ばれたのか、元々そのような遺伝子が含まれていたのか、なんとも神秘的に感じます。こういった現象が実生の醍醐味ですね。

真っ白な花のカワラナデシコ
(6月中旬)真っ白の花を咲かせたカワラナデシコ

花色が真っ白になると清楚な印象です。遺伝子の多様性を感じます。

カワラナデシコの害虫クロウリハムシ
(6月中旬)咲きかけの蕾に止まったクロウリハムシ

害虫のクロウリハムシがやってきました。毎年のように見ますが、年によって発生量が違います。近所の畑でキュウリが作られていた時は多かったです。

カワラナデシコのさく果
(7月下旬)カワラナデシコのさく果

開花から約一か月で種ができます。さく果が茶色くなって先端が開いたらこぼれる前に集めます。

カワラナデシコの黒い小さな種子
(7月下旬)カワラナデシコのさく果と種子

さく果の中には黒い種がたくさん入っています。大きさは2.5mmほど。平べったい形をしていて風で飛びそうです。私はこの種を毎年取り撒きしています。地面がむき出しの場所であれば良く育ちます。他の植物が茂った場所では発芽しても生き残る数が少ないです。

秋の様子(9~11月)

9月までは断続的に少量の花を咲かせます。冬が近づくと長い茎は枯れ込み、株元には葉のついた短い茎が残ります。

冬の様子(12~2月)

常緑性で、わずかな葉と芽を残して越冬します。花の咲いていた茎はカラカラに乾いて枯れます。寿命を迎えた古い株は葉も根も全て枯れてその生涯を終えます。秋に発芽したフレッシュな株は数枚の葉で越冬します。

育てた感想など

見た目と育てやすさ

穏やかで優しい印象の花です。繊細さと美しさを併せ持った素敵な花だと思います。

栽培は日照さえ確保できれば難しくありません。周囲に他の植物が茂るのは苦手なようで、埋もれるといつの間にか消えてしまいます。寿命の短さ故に更新作業を意識的に行う必要があります。発芽させるのは簡単で、こぼれ種からも良く増え、芝生の中から芽が出てくる事もあります。

おすすめの使い方

野趣に富み、ロックガーデンやナチュラルガーデンに向く花です。広い植え込みでは通路沿い等、他の植物の陰にならない場所が適します。

相性の良さそうな植物

草原や里山のイメージで、日向で育つ和の植物や秋の七草との相性が良いです。混植する場合は背の低い草花を合わせます。カワラナデシコの株元に光が当たる状態をキープします。

組合せ例:オミナエシ、キキョウ、ハギ、フジバカマ、ノカンゾウ、ススキ、カレックス

混植例:スミレ、ヒメオミナエシ、ヒメワレモコウなど

関連情報

可憐な野生のタカネナデシコ

山で見たタカネナデシコの花
(8月中旬 南アルプス)カワラナデシコに良く似たタカネナデシコ

タカネナデシコはカワラナデシコの変種で、山地に自生する種類です。南アルプスの登山中に何度か見かけたことがあります。斜面の草地で、山地性の植物に紛れて花を咲かせていました。カワラナデシコに比べて花弁の切れ込みが深く、とても繊細な見た目です。花はピンクで優しい色です。この花は南アルプス国立公園の保護対象として指定植物になっています。

野生のシロバナタカネナデシコ

山で見たタカネナデシコの白花
(8月中旬 南アルプス)純白のシロバナタカネナデシコ

通常のタカネナデシコのすぐ隣に白花も咲いていました。繊細な美しさがより際立ちます。まるで純白のドレスを着た美しい女性のようです。個体数が少ないのか、この写真のもの以外には出会っていません。貴重な姿を見せてもらいました。大自然に感謝します。

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