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【図解】ブランチカラーとは?正しい剪定方法を覚えよう!

庭の手入れ

ブランチカラーは林業や造園業で用いられる専門用語です。枝の分岐点にある盛り上がった部分を指し、枝の切断位置を決める目安になっています。枝を切る位置は、剪定後における傷の塞がり方や幹の腐朽に影響し、極端に言えば樹木の将来さえ左右する重要事項です。

この記事は、以下の方におすすめです。

  • ブランチカラーについて知りたい。
  • 樹木の正しい剪定位置を知りたい。
  • 枝の切り口が塞がる仕組みを理解したい。

ブランチカラーをキーワードに、樹木の正しい剪定位置について図と写真を使って解説します。合わせて覚えておきたいブランチバークリッジについても触れます。

枝の構造と用語の解説

剪定位置の話に入る前に、まずは枝の構造と用語をご説明します。

枝と幹の構造を断面的に見る

ブランチカラーの図
断面的に見た幹と枝の構造

幹と枝は外から見ると繋がって一体に見えますが、組織で見ると幹が枝を巻き込む構造になっています。また、幹の組織と枝の組織は相互に絡み合い、引き裂けないようになっています。

幹組織と枝組織の境界部分を表す用語としてブランチカラーブランチバークリッジがあります。この二つの境界点は周囲よりわずかに盛り上がっていて、幹と枝の組織が混在しています。

枝の襟「ブランチカラー」

ブランチカラーの例
クリの木のブランチカラー

ブランチカラーは造語で、ブランチは枝、カラーは襟(えり)の事です。幹の細胞が枝の細胞を覆っている部分(写真の赤矢印)を指します。樹種や生育状態によっては分かりづらい場合もありますが、わずかに膨らんでいます。この部分には幹の組織が含まれており、傷口を塞ぐために残すべき組織です。

幹と枝の境界線「ブランチバークリッジ」

ブランチバークリッジの例
サクラの枝元のブランチバークリッジ

ブランチバークリッジは、幹と枝の接続部の上部にできるシワ状の部分(写真の赤矢印)を指します。幹の細胞と枝の細胞が押し合って重なり合いながら形成されます。イメージとしては、地殻変動でプレートが押し合って山脈が隆起する様子に似ています。こちらも傷口を塞ぐために残すべき組織です。

菌の侵入を防ぐ「防御層」

樹木は枝が枯れる段階になると、幹との接続部分に強力な防御層を作り出します。防御層にはフェノール性物質又はテルペン類といった化学物質が蓄積され、腐朽菌の侵入をガードします。

木材腐朽

腐朽して幹に空洞ができたモミジ
枝から幹へ腐朽が進行し幹に空洞ができたモミジ

木材腐朽とは、菌が引き起こす自然の分解現象です。生きた樹木に菌が取り付いてしまった場合、腐朽病害と呼び、進行すると倒木や枝折れの原因にもなります。一度腐朽菌が侵入すると、完全に取り除くことは困難とされています。

枝折れや剪定で木質部(木の内部組織)が菌に晒されると腐朽リスクが高まります。剪定位置が不適切な場合、傷がいつまでも塞がらず、菌の侵入リスクが上がっていきます。いかに腐朽を防ぐかが、樹木の寿命を延ばす上で重要となります。

正しい剪定位置と切り口の癒合

正しい位置で切る「ナチュラルターゲットカット」

剪定位置の図
樹木の枝の剪定位置。Aの位置が正しい。

枝の正しい剪定位置はブランチカラーとブランチバークリッジを傷つけずに、枝の残りが最小になる位置です。図ではAの位置です。この方法をナチュラルターゲットカットと呼びます。

残念ながら、街中の樹木の剪定跡を見ると、この切り方が正しく実践されている例は少ないです。

間違った剪定 その1「スタブカット」

スタブカットの例
悪い例:スタブカットで切り残しのある枝

枝に切り残しのある状態をスタブカットと呼びます。先ほどの図ではBの位置です。ブランチカラーとブランチバークリッジを傷つけない事だけを考えると、枝はどこで切っても良いように思えます。しかし、切り残しがあると、傷口が塞がるのに邪魔になる事がわかっています。

間違った剪定 その2「フラッシュカット」

幹と並行に深く切る事をフラッシュカットと呼びます。図ではCの位置です。かつては、この方法が良しとされていましたが、傷の回復が阻害され、幹まで腐朽が進みやすいことが分かり、現代では適切な切断位置が見直されました。樹木へのダメージが大きい切り方です。

切り口が塞がる仕組み

完全に塞がったサクラの剪定跡
傷口が完全に塞がったサクラ

樹木の活動により切り口が自然に塞がる様子を癒合又は巻き込みと呼びます。形成層が新たな木質部と樹皮を作って切断面を覆うように伸び、やがて完全に塞がります。切り方が正しければ、円形に組織ができて、切断面の外周から中央に向かって伸びていきます。

癒合には光合成によって作られる養分が使われます。切り口より上部に葉が少ない状態だと、癒合は著しく遅くなります。また、断面が大きいと、傷が塞がるまでにかなりの年月がかかります。

癒合を早めるには鋭利な刃物を使い、切り口は平滑の方が良いとされます。

傷口保護剤

トップジンMペースト
トップジンMペースト

傷口を守る用途で、ペースト状の保護剤が市販されています。定番の製品としてはトップジンMペーストが有名です。殺菌成分も含まれており、傷の新しい時期に侵入するタイプの病原菌に有効です。

直径2cm以上を目安に切り口に塗ると良いです。また、傷の回復が遅い盆栽にも効果的です。

まとめ

この記事ではブランチカラーと、樹木の正しい剪定位置について解説しました。最後に要点を整理します。

  • ブランチカラーとブランチバークリッジは傷つけない。
  • フラッシュカットとスタブカットは避ける。
  • 腐朽防止のため傷口保護剤を塗った方が良い。

剪定は単純なようで実はとても奥が深い分野です。枝を切る時はブランチカラーを意識して、正しい位置で剪定しましょう。ここまで読んでいただきありがとうございました。

参考文献

  1. 一般財団法人日本緑化センター『最新・樹木医の手引き改訂4版』(平成27年6月)
  2. 一般社団法人日本造園建設業協会『街路樹剪定ハンドブック 第3版3刷』(平成28年10月)

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