植物の生育を大きく左右する土。庭作りは「土作りに始まり土作りに終わる」と言っても良いくらいです。
庭での土作りでは植物の生育に最適な団粒構造を目指す事が重要です。この記事では土の性質と団粒構造について解説します。土壌の事を深く知り、植物が元気に育つ環境を整えましょう。
まずは土を知る
団粒構造の理解を深めるため、まずは土の基本的な性質をご説明します。
- 土の成り立ち
- 土の三相分布
- 土性
土の成り立ち
土には様々な物質が混ざっていますが、大部分は岩石が長い年月をかけて風化し細かくなった土壌粒子と、植物・動物などの有機物が分解されてできた腐植で構成されます。そして、物質のすきまには水や空気が含まれています。これらの構成要素のバランスによって土の性質が変わってきます。
土の三相分布
三相分布とは土の物理的な三要素「固相、液相、気相」のバランスです。
土壌は土の粒=固相、水=液相、空気=気相で成り立っていて、一般的な植物の生育に適したバランスは、固相40~60%、液相20~30%、気相20~30%と言われます。
また、バランスは常に変化していて、雨が降ると一時的に液相の割合が上がり、気相の割合が減少します。踏み固められた土は固相の割合が高いです。
土性
土性とは土壌粒子の大きさで決まる土の性質の事です。土はどの大きさの粒子がどの割合で入っているかによって物理的な性質が変化します。
例えば、砂地は大きな粒子の割合が多いので隙間がたくさんあり透水性と通気性が良い反面、保水性と保肥力が低いです。粘土は粒子が小さく隙間が少ないので透水性と通気性が悪いですが、保水性と保肥力は高いです。
団粒構造を知る
ここからは土の性質を踏まえて本題の団粒構造について触れていきます。
- 団粒構造と単粒構造
- 自然界では勝手に団粒化が進む
- 団粒構造をつくろう
- 団粒構造を維持するために
団粒構造と単粒構造
団粒構造とは土の粒子が集まって小さな粒状の塊となった構造です。粒で構成された土には適度な隙間ができ、水や空気の通り道となります。
これは物理的な三要素のバランス「土の三相分布」が良い状態で、根の生長や微生物が繁殖するのに適した状態と言えます。
団粒の一粒をさらに細かく見てみると、内部には微細な隙間があり水を貯えることができるので保水性・保肥力も良い状態となります。
透水性・通気性があるのに保水性・保肥力もある、それが団粒構造の優れた性質です。
一方で、単粒構造という言葉があり、土の粒子が塊にならずに集まっている状態を指します。この場合、隙間が少ないので通気性や排水性が悪く、植物の栽培に適した状態ではありません。
この構造の差が土づくりのカギとなります。
自然界では勝手に団粒化が進む
自然の環境では落ち葉や生き物の死がいが常に蓄積され、ダンゴムシ等の生き物が分解する事で地面に有機物が供給されます。土壌の有機物はミミズや微生物によって更に細かく分解されて腐植になります。腐植は団粒化を促し、植物が育ちやすい環境を維持します。
自然界では植物の生長、有機物の供給、有機物の分解というサイクルが永遠と繰り返されているのです。
団粒構造をつくろう
土づくりは微生物やミミズなどの土壌生物の力を借りて単粒構造を団粒構造に変えていく事が重要です。そのためには土壌生物のエサである腐植を含んだ完熟堆肥や腐葉土などの有機物を投入します。
なお、地面の深い場所は酸素が少なく微生物はあまり活動していません。庭の場合、混ぜ込む深さは30~40cmで十分です。
団粒構造を維持するために
土が痩せるという言葉が示す通り、腐植は消費されて減っていきます。腐植が減ると団粒構造は徐々に崩れ、単粒構造に戻ってしまいます。団粒構造を維持するためには定期的に有機物を補充しましょう。
ある程度団粒化が進めば、混ぜ込まずに地表に撒くだけで良くなります。ミミズや虫、微生物が勝手に混ぜてくれます。
まとめ
この記事では土の性質と団粒構造について解説しました。最後に要点をまとめます。
- 土は土壌粒子と腐植、そして隙間でできている。
- 理想の三相分布は固相40~60%、液相20~30%、気相20~30%
- 団粒構造は透水性・通気性があるのに保水性・保肥力もある
- 土作りは単粒構造を団粒構造に変えることが重要
- 団粒構造は土壌生物がつくる
- 団粒構造を維持するためには腐植を補充する
土は植物にとって家のようなものです。植物は動けないので、人が決めた場所でも元気に育つために、居心地の良い環境を整えてあげましょう。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
参考文献
- 一般財団法人日本緑化センター『最新・樹木医の手引き改訂4版』(平成27年6月)
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