植物の栽培で必ずと言ってもいいくらい遭遇する害虫たち。どこからともなくやってきて、時には群れで植物を食べ尽くしてしまいます。一方で、人間の役に立つ虫もいて、害虫とは反対の意味合いで益虫(えきちゅう)と呼ばれます。中には害虫を退治してくれる心強い庭の味方も存在します。
この記事では、害虫の天敵となる「益虫」についてご紹介します。
益虫の種類
害虫対策にもなる益虫
益虫は何らかの形で人間に利益をもたらす虫全般を指します。害虫を食べてくれる肉食の昆虫やクモ、花粉を運んで受粉を助けてくれるミツバチやチョウ、絹糸を作るカイコも益虫です。その中で害虫の被害を減らしてくれるのは肉食性の益虫です。
主な肉食性の益虫
身近に見られる肉食性の益虫をまとめました。(※見る人によっては害虫にもなるかもしれません。)
分類 | 種類の例 | 食性 ※ |
テントウムシの仲間 | ナミテントウ、ナナホシテントウ | アブラムシ |
クモの仲間 | ジョロウグモ、ナガコガネグモ、ハナグモ、ハエトリグモ | 他の虫全般 |
サシガメの仲間 | ヨコヅナサシガメ、シマサシガメ、オオトビサシガメ | 他の虫全般、イモムシなど |
ムシヒキアブの仲間 | シオヤアブ、サキグロムシヒキ、マガリケムシヒキ | ハエ等の飛ぶ虫、幼虫時代はコガネムシの幼虫 |
トンボの仲間 | オニヤンマ、シオカラトンボ、イトトンボ | チョウ、ガ、蚊、ハエ等の飛ぶ虫 |
カマキリの仲間 | オオカマキリ、ハラビロカマキリ、コカマキリ | 他の虫全般、小さな爬虫類など |
ハチの仲間 | アシナガバチ、スズメバチ、トックリバチ | 他の虫全般、特にイモムシ |
写真で見る益虫の種類
私の庭で活躍する頼もしい益虫たちを写真付きで紹介します。画像はクリックで拡大できます。
ナナホシテントウ
アブラムシを一網打尽にしてくれる頼もしい味方です。庭で繁殖し、幼虫も一緒に庭を守ってくれています。成虫一匹で1日に100匹以上のアブラムシを食べます。
ハラグロオオテントウ
普通のテントウムシの倍近くあるビッグサイズ。桑の木の害虫であるクワキジラミが主食で、アブラムシも食べるようです。写真の下側にいるのは大きさ比較の為に置いたナナホシテントウです。庭での目撃はごく稀です。
ハナグモの仲間
花にいる事が多い小さなクモです。巣を作らず待ち伏せで狩りをする種類です。個体によっては緑色になります。
ササグモ
こちらも巣を張らずに待ち伏せをして狩りをします。草むらを縄張りとしています。茎の先端や新芽に止まっている事が多いです。私の庭ではこの種類が一番多いです。
シマサシガメ
クールな見た目に反して獲物をブスリと捉えます。カメムシの一部は肉食で、イモムシや様々な害虫を食べてくれます。結構活発に移動し、羽で飛ぶこともあります。
アカサシガメ
全身が赤くて派手なカメムシです。こちらもイモムシや小型の害虫を退治してくれます。
マガリケムシヒキ
飛んでいる蚊やハエを捕まえる肉食のムシヒキアブの仲間です。幼虫時代は地中や朽木の中で生活し、コガネムシ(幼虫)の重要な天敵です。
カマキリ
強力なカマで動くもの一瞬にして捕まえます。成虫になると小型の爬虫類さえ獲物にします。写真はまだ駆け出しのハンター。今後の活躍に期待です。
スズメバチ
強力なアゴ・毒・高速飛行というハイスペックを誇ります。守備力の高いコガネムシ(葉を食い荒らすドウガネブイブイ)を捕食しているところを目撃しました。刺されると危ないですが、重要な益虫です。養蜂家にとってはミツバチを襲う害虫になります。
益虫のニセモノ
見た目から益虫かと思いきや、実は害虫という虫もいます。
オオニジュウヤホシテントウ (害虫)
植物を食べるテントウムシの一種で、点の模様(星)が28個あるジャガイモの主要害虫です。幼虫はトゲトゲした姿をしています。
ヨツボシテントウダマシ (害なし)
テントウムシのような斑紋を持つテントウムシダマシの一種です。菌を食べるため、植物には特に害はないようです。
草食系カメムシ類 (害虫)
体の幅が広いカメムシはほとんど害虫で、益虫カメムシの体系はスリムです(但しスリムな害虫カメムシもいます)。写真は外来種のキマダラカメムシです。
ハキリバチ類 (害虫)
成虫が葉を切り取って巣(細い竹筒等)に持ち帰る修正があります。写真は切り取られたアオダモの葉の様子です。他にも、ヒメシャラ、イカリソウでも被害が出ています。ハチ自体はミツバチ程度のサイズでした。
益虫を庭に呼ぼう
庭に益虫を呼び込むためには以下のポイントを押さえましょう
- 自然に近い多様性のある環境づくり
- バンカープランツを植える
- 農薬はなるべく減らす
- 益虫同士が戦う事もある
自然に近い多様性のある環境づくり
獲物となる虫がいてこそ益虫はやってきます。庭に小さな生態系ピラミッドを形成するイメージで、様々な生物が暮らせる自然に近い空間「ビオトープ」を意識すると良いです。植物は量も種類も多い方が良いでしょう。蜜の多い花には良く虫が集まります。
害虫が一定量いる事になりますが、生き物のバランスが保たれるため極端な大発生は防ぐ事ができます。
バンカープランツを植える
日本語で表すと、おとり植物を意味し、有機農法テクニックの一つです。作物を守るために、害虫の天敵を戦略的に温存する植物の事を指します。
例えばマメ類の栽培でマメアブラムシ対策としてテントウムシを呼ぶために、ネギアブラムシが集まるネギやニラを周囲に植えるといった事です。また、雑草も種類によっては十分バンカープランツになります。雑草の一部を抜かずに残しておくのも良いでしょう。
農薬はなるべく減らす
殺虫剤は特定の害虫だけでなく多くの益虫までも殺してしまいます。使用するのは仕方ない時もありますが、局所的に散布する等で必要最低限にとどめた方が良いです。
益虫同士が戦う事もある
厳しい自然界では虫たちの仁義なき戦いが繰り広げられています。肉食性の虫たちは害虫だけを食べるわけではないので、益虫同士もお互いが天敵になります。
次の2枚の写真では、アブラムシ>テントウムシ>シマサシガメ>ササグモの順で食物連鎖が起きています。自然の摂理というやつですね。
まとめ
この記事では、害虫の天敵となる益虫の種類と呼び方についてご紹介しました。最後に要点をまとめます。
- 害虫を退治してくれる益虫はたくさんいて、みんな肉食性。
- 益虫は害虫による被害の軽減に役立つ。
- 益虫を庭に呼ぶには多様性のある環境をつくる。
益虫の力を借りると、上手くいけば無農薬でも植物を育てることができます。自然にやさしいガーデニングとして、取り入れてみてはいかがでしょうか。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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