花の蜜を求めて庭をひらひらと舞う蝶たち。穏やかな光景を見ているとなんだか心が安らぎます。自然環境への意識の高まりから、今バタフライガーデンに注目が集まっています。
バタフライガーデンを目指すには、蜜源植物と食草がキーワードとなります。この記事では、一般のお庭向けに作り方のコツや蝶が好む花、食草について書いていきます。私の実践例も踏まえて、実際に庭に訪れた蝶も紹介します。
バタフライガーデンに必要なもの
蝶を呼ぶには、次の二つが重要となります。
- 蜜源植物
- 食草
蜜源植物とは
元々は養蜂の言葉で、虫たちが蜜を集めるために集まる花を指します。花の種類によって蝶の集まりやすさに差があるため、蝶が好む花を意識的に取り入れる事がバタフライガーデンの第一歩です。蜜源植物に向いているのは、小花が集まって次々に咲くタイプ(=常に新鮮な蜜がある)の花が多いです。少し例を挙げるとブッドレア、宿根バーベナ、ランタナなどがあります。また、園芸品種より原種に近い品種を好むともいわれます。意外にも大輪の花は蝶にとって魅力的とは限らないようです。
食草とは
食草とは蝶の幼虫が食べる植物の種類を指します。蝶は種類ごとに特定の植物の葉を食べる傾向にあるため、食草を庭に植えると狙った蝶がやってくる可能性が出てきます。また、食草を用いれば、花の蜜を吸いに来ない蝶(果肉や樹液を好む種類等)も呼ぶことができます。蝶はとってもグルメですね。
作り方のポイント
- 花が途切れないようする
- 高低差をつけ立体的に配置する
- 花色を工夫する
- いろんな環境を用意する
花が途切れないようする
多くの蝶は4月~10月にかけて活動します。この期間に常に花が咲いている状態を目指しましょう。花期の長い種類を中心に、小花が次々と咲き続ける種類を複数選ぶと良いです。真夏は花木や宿根草の花が少なくなりがちですが、一年草を織り交ぜると補うことができます。
高低差をつけ立体的に配置する
蝶は種類によって移動時の飛ぶ高さが異なります。例えばアゲハチョウは高いところを飛び、シジミチョウは地面すれすれを良く飛びます。高さの違う花を組み合わせて植えれば、蝶が花を見つけやすくなります。ボーダーガーデンのように配置しても良いでしょう。
花色を工夫する
蝶は種類によって好きな花色が違い、モンシロチョウは黄色、アゲハチョウは赤色の花を好むと言われます。紫の花は多くの蝶が集まる色です。呼びたい蝶が決まっている場合は花壇のメインカラーも意識しましょう。
様々な環境を用意する
多くの蝶は日向を好み、春先には日向ぼっこで体温を上げている姿が見られます。日陰を好む蝶もいて、ジャノメチョウやヒカゲチョウは木陰の葉の上にとまっている事が多いです。地面から吸水する蝶もいて、夏に水を撒くとアゲハチョウの仲間が降りてくる事があります。様々な環境を用意することで訪れる蝶の種類が増えていきます。
おすすめの蜜源植物
中低木、宿根草及びグランドカバー、一年草の3つに分けてご紹介します。
中低木
ブッドレア
花期:6~9月
バタフライブッシュと呼ばれるくらい蝶に人気で、房状の小花が長い期間咲き続けます。アゲハチョウ類、タテハチョウ類、その他多くの蝶が集まります。小花が多いおかげで蝶の滞在時間も長いです。
アベリア
花期:7~10月
とても丈夫な低木で白い花を長い期間咲かせます。ピンクの花の品種や斑入り品種もありますが、蝶のために植えるなら花付きの良い基本種がおすすめです。アゲハチョウ、セセリチョウ類が好みます。
ツツジ
花期:4~5月
庭園や街路樹で良く植えられるツツジにはアゲハチョウの仲間がやってきます。ヒラドツツジ、オオムラサキツツジ、ヤマツツジ等たくさんの種類があります。
ハギ
花期:6~9月
秋の七草の一つで、しなやかな枝に紫の花がたくさん咲きます。庭植えにはミヤギノハギやヤマハギが一般的です。シジミチョウの仲間がやってきます。キチョウの食草でもあります。
宿根草・グランドカバー
宿根バーベナ
花期:5~10月
三尺バーベナとして知られる大型のボナリエンシス種や小型のリギダ種が育てやすいです。アゲハチョウ、モンシロチョウ、その他多くの蝶が訪れます。
ランタナ
花期:8~9月
手毬状の花が長い期間咲き続けます。主な種類は普及種のカマラとコバノランタナがあります。アゲハチョウ類、ヒョウモンチョウ類、その他多くの蝶が利用します。
タイム・ロンギカウリス
花期:4~5月
クリーピングタイムとも呼ばれ、地面を這うように伸びます。鑑賞用のハーブで香りがありグランドカバープランツとしてもおすすめです。ヒョウモンチョウ類やシジミチョウの仲間が好みます。
ラベンダー
花期:6~7月
爽やかな香りで人気の高いハーブです。暖地では暑さに比較的強いラバンディン系の品種がおすすめです。モンシロチョウ、タテハチョウ類、その他様々な蝶が来ます。
ルドベキア
花期:7~10月
ヒマワリを小さくしたような花が特徴で、花期が長いです。品種がたくさんありますが黄色の花を咲かせる種類が多いです。シジミチョウ、タテハチョウ類が好みます。
クナウティア
花期:5~10月
スカビオサに似た野趣あふれる花です。薄紫の花を咲かせるアルベンシス種がおすすめです。花期が長く、こぼれ種でよく増えます。セセリチョウ、ヒョウモンチョウの仲間がやってきます。
ヒガンバナ
花期:9月
燃えるような真っ赤な花と突き出した雄しべが特徴的な球根植物です。白花や黄花の品種もあります。クロアゲハ等のアゲハチョウが訪れます。
フジバカマ
花期:8~9月
秋の七草の一つで、8月から9月頃に花を咲かせます。アサギマダラが好む花として有名です。
その他、エキナセア、アガスターシェ、モナルダ、ハニーサックル、オニユリ、ニラなども蝶が好む花です。
一年草
マリーゴールド
花期:5~10月
黄色やオレンジの花が鮮やかで丈夫なことから花壇に良く植えられます。花壇向けのフレンチ種と背が高くなるアフリカン種があります。アゲハチョウ、ツマグロヒョウモン等がやってきます。
ジニア
花期:5~11月
和名はヒャクニチソウ(百日草)と言い花期が長く花色が豊富です。背丈の高い品種、花壇向けの小さい品種があります。アゲハチョウ類、タテハチョウ類、その他多くの蝶が好みます。
ペンタス
花期:5~10月
五角形の星型の花を株いっぱいに咲かせます。名前の由来はギリシャ語で「5」を意味するペンタからきています。アゲハチョウの仲間がやってきます。
コスモス
花期:6~11月
秋のイメージにぴったりな人気の花です。背が低い種類、早咲きの種類など様々な品種があり、種からでも育てやすいです。アゲハチョウやキチョウ等が訪れます。
番外編
一般的には庭に植えない植物や雑草ですが、蝶が好むものをご紹介します。
ヤブガラシ
花期:6~8月
庭に生えると非常に厄介なつる性の雑草ですが、花には蜜がたっぷりあります。ナミアゲハやアオスジアゲハが良く飛んで来ます。
その他、タンポポ、アザミ、ハルジオン、ムシトリナデシコなども蝶がやってきます。
蝶と食草の組み合わせ
食草があれば蝶が産卵に来てくれることがあります。特定の蝶を呼ぶ場合、お庭に食草を植えてみましょう。
蝶の種類 | 主な食草(樹木や雑草も含む) | 成虫の活動時期 | 家庭向き |
モンシロチョウ | アブラナ科:ナノハナ、キャベツ、ブロッコリー | 3~11月 | 〇 |
モンキチョウ | マメ科:シロツメクサ、ミヤコグサ、レンゲソウ、コマツナギ | 7~8月 | |
キチョウ | マメ科:ハギ、ネムノキ | 4~11月 | 〇 |
ウスバシロチョウ | ケシ科:ムラサキケマン、エゾエンゴサク | 4~5月 | |
ギフチョウ | ウマノスズクサ科:カンアオイ、フタバアオイ | 4~5月 | |
ナミアゲハ | ミカン科:ミカン、レモン、サンショウ | 3~11月 | 〇 |
クロアゲハ | ミカン科:サンショウ、カラスザンショウ、ミカン | 4~10月 | 〇 |
カラスアゲハ | ミカン科:カラスザンショウ、ミヤマシキミ、サンショウ | 4~9月 | |
キアゲハ | セリ科:セリ、ミツバ、パセリ、ニンジン | 4~8月 | 〇 |
アオスジアゲハ | クスノキ科:クスノキ、タブノキ、シロダモ、ヤブニッケイ | 5~8月 | |
ジャコウアゲハ | ウマノスズクサ科:ウマノスズクサ、リュウキュウウマノスズクサ | 4~9月 | |
ヤマトシジミ | カタバミ科:カタバミ、エゾカタバミ | 4~11月 | |
ベニシジミ | タデ科:スイバ、ギシギシ | 3~11月 | |
ウラギンシジミ | マメ科:クズ、フジ、ハリエンジュ | 3~11月 | |
ミドリシジミ | カバノキ科:ハンノキ、ヤマハンノキ | 6~8月 | |
ツマグロヒョウモン | スミレ科:スミレ、タチツボスミレ、パンジー、ビオラ | 4~11月 | 〇 |
ミドリヒョウモン | スミレ科:スミレ、タチツボスミレ、パンジー、ビオラ | 6~9月 | 〇 |
キタテハ | アサ科:カナムグラ | 3~11月 | |
アカタテハ | イラクサ科:イラクサ、カラムシ、ヤブマオ | 3~11月 | |
ルリタテハ | ユリ科:ホトトギス サルトリイバラ科:サルトリイバラ | 3~12月 | 〇 |
アサギマダラ | ガガイモ科:キジョラン、カモメヅル、イケマ、サクララン | 5~11月 | |
オオムラサキ | アサ科:エノキ、エゾエノキ | 6~8月 | |
ゴマダラチョウ | アサ科:エノキ、エゾエノキ | 5~9月 | |
アカボシゴマダラ | アサ科:エノキ | 4~10月 | |
テングチョウ | アサ科:エノキ | 3~6月 | |
ヒメウラナミジャノメ | イネ科:チジミザサ、ススキ | 4~9月 | |
サトキマダラヒカゲ | イネ科:ササ類、タケ類 | 5~9月 |
実際にバタフライガーデンに来た蝶たち
ここからは、私の庭に来た蝶をご紹介します。立地は東京都多摩地域の住宅街で、周辺環境は近くに雑木林や河川があります。郊外なので多くの蝶がやってきてくれました。
植えている主な蜜源植物は、ブッドレア、ツツジ、ハギ、クリーピングタイム、ラベンダー、ルドベキア、エキナセア、クナウティア、オニユリなどです。
食草は、ミカン(ナミアゲハ、クロアゲハ)、ミヤギノハギ(キチョウ)、スミレ類(ツマグロヒョウモン)、ホトトギス(ルリタテハ)、ムラサキケマン(ウスバシロチョウ)を植えています。
その他、モンキチョウ、キアゲハ、クロアゲハ、アオスジアゲハ、キタテハ、ルリタテハ、ヒメウラナミジャノメ、ヒカゲチョウ、イチモンジセセリ、ダイミョウセセリ等たくさんの種類がやってきました。
食草には、アゲハチョウとツマグロヒョウモンがほぼ毎年発生しています。たまにキチョウとルリタテハも生まれています。
まとめ
この記事ではバタフライガーデンの作り方や蝶が好む花、食草について解説しました。最後に要点をまとめます。
- 蜜源植物が常に咲いている状態をつくる
- 食草を植えると上手くいけば庭で蝶が育つ
- 花の高低差、花の色、庭の環境を工夫する
自然が失われつつある現代ですが、庭の中に蝶の生きる環境を作ってみませんか。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
参考文献
- 株式会社講談社エディトリアル『ガーデン植物大図鑑 第一冊』株式会社講談社(2008年11月)
- 昆虫図鑑 | 種類と特徴を調べる図鑑 (konchu-zukan.info)
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