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カノコユリ(鹿の子百合)の育て方と栽培レポート

見ごろを迎えたカノコユリの花 栽培レポート

カノコユリ(鹿の子百合)について、栽培事例をご紹介します。私の場合の育て方や、四季の様子、育てた感想等をまとめます。これから育てたい方や、既に育てている方の参考になれば幸いです。

私が育てているのはアカカノコユリ(赤鹿の子百合)です。赤みが濃い選抜個体で、一般にこのタイプが多く出回っています。この記事では便宜上、カノコユリとして取り扱います。栽培のポイントは夏の強光と土の乾燥を避ける事です。

カノコユリ(鹿の子百合)の特徴

分岐してたくさん花を咲かせたカノコユリ
(8月上旬 自宅の庭)花茎が分岐して多数の花を咲かせた

カノコユリは日本、台湾、中国に局所的に分布するユリです。日本国内では九州、四国の限られた範囲でしか見られない希少な植物で、野生のものは絶滅危惧種に指定されています。甑島列島(鹿児島県薩摩川内市)は日本一の自生地とも言われています。甑島では海に面した斜面の草原に群生が見られ、観光スポットになっています。ヤマユリと共に交配親として重要で、オリエンタルハイブリッドが生まれるきっかけになりました。名前の由来は花弁の模様が夏の鹿の毛の模様に似ていた事にちなんでいます。白花はシロカノコユリ、台湾、中国のものはタイワンカノコユリと呼ばれます。

カノコユリの花期は遅めで、夏の最も暑い時期に大輪の美しい花を咲かせます。花の直径は10cmになり、野生のユリではヤマユリ、オニユリに次ぐ大きさです。茎は弧を描くように伸び、先端付近が分岐してぶら下がるように花が咲きます。ユリの中では比較的ウイルス病に耐性があり性質も丈夫で育てやすいユリです。

流通形態としては、主に球根(正確には鱗茎)が秋(9~11月頃)に出回ります。夏にポット苗で販売されている事もあります。

基本データ
学 名Lilium speciosum
分 類ユリ科 ユリ属
形 態多年草(冬季落葉)
原産地日本、台湾、中国
大きさ高さ100~150cm、幅20~40cm
開花期7~8月
花 色ピンク
日 照半日陰
水 分湿潤気味
耐寒性
耐暑性
増やし方株分け(木子)、実生、鱗片挿し
用 途庭植え、鉢植え、切り花
カノコユリの基本データ

わたしの育て方

私の庭では3株育てています。1株は2019年の秋より育て始め、花があまりにも綺麗でとても気に入って、翌年の秋に2球追加しました。入手時はどちらも袋入りの鱗茎です。庭では7月下旬のオニユリが終わる頃、バトンタッチするかのように咲き始めます。毎年花を咲かせ、高さは150cm程度まで育ちます。根元に木子(子株)が増えて株立ち状になりました。

栽培環境

カノコユリは夏の強光と乾燥を嫌います。半日陰で保水性と排水性の良い場所を好みます。

私は半日陰の場所を選んで地植えにしています。建物と落葉樹の陰となり、夏の直射日光は午前中の2時間ほどしか当たりません。その他の時間帯は反射光のある明るい日陰になっています。

植え付け場所の排水性を高めるため、石を並べて土留めを作り周囲の地面より20cmほど高くしています。いわゆるレイズドベッドに近い状態です。土には植え付け時にバーク堆肥を混ぜて排水性と保水性を改良しました。その他には、乾燥防止と有機物補給のため剪定枝チップを利用したマルチングも毎年行っています。

水やり

ユリの仲間は強い乾燥を嫌います。夏で晴天が続く時だけは水やりをしています。マルチングによる乾燥対策をしているため頻度は少ないです。

肥料

春に緩効性肥料を少しだけ与えています。合わせて堆肥を地表に薄く撒いています。

病気・害虫

目立った病害虫は出ていません。

お手入れ

花ガラ摘みが主で、基本的に手がかかっていません。花ガラを取る際はウイルス病予防のためハサミを使わず、手でもぎ取るようにしています。種をつけさせない事で球根(鱗茎)が太ります

茎は直立してから弧を描くように斜めになります。我が家では通路側に倒れてくるので支柱を立てています。

増やし方は木子(茎の根元につく子株の鱗茎)の株分け、実生、鱗茎挿しがあります。以下の宗像カノコユリ研究会さんのサイト(外部サイト)が特に詳しく解説していて参考になります。

リンク:育て方 | 宗像カノコユリ研究会 (kanokoyuri.info)

四季の生育状況

春の様子(3~5月)

芽出しは早く、3月下旬には伸び始めます。6月には茎が長くなり、先端が分岐し始めます。背丈と花数は鱗茎の大きさに比例して大きく、多くなります。

夏の様子(6~8月)

ピンクに色づいたカノコユリのつぼみ
(8月上旬)ピンクに色づいた開花直前の蕾

若いつぼみは薄い緑色で、開花が近づくと紅色に染まります。先端には3本の突起があります。

透明感のあるカノコユリの花
(8月上旬)陽光で透けるキョウガノコの花弁

花は花茎の下段から上段に向かって順番に咲き進みます。花弁はそり返り、雄しべと雌しべが長く突き出します。個々の花は5~6日で落ちますが、大株で蕾が多くなると長期間楽しめます。名前の由来にもなっている鹿の子模様はただの色だけではなく、立体的に盛り上がっています。作りがとても細かい花です。

カノコユリの根元に増えた木子
(8月上旬)

根元からは木子の細い茎が多数伸びています。早ければ翌年に花をつけます。掘り上げて株分けすれば簡単に増やせます。

ちなみに写真に写っている白い石は、冬に鱗茎の位置を確認するための目印です。地上部が無くなっても正確な位置を把握できます。株分け時の掘り上げや、誤ってスコップで傷つけないための目印にしています。

秋の様子(9~11月)

寒くなるまでは残った葉が光合成を続け、鱗茎に養分を送ります。花ガラを残した場合は実ができて種が熟します。

冬が近づくと葉が黄色くなって枯れて休眠期に入ります。

冬の様子(12~2月)

地上部は全て枯れ、何もなくなります。植えた場所がわからなくなるので、誤って掘り返さないよう位置を覚えておくと良いです。

寒さには強く、防寒対策は不要です。

育てた感想など

見た目と育てやすさ

美しさと可愛らしさに加えて、野趣も持ち合わせたユリです。イメージは和洋問わず馴染みます。近くで見ても遠くで見ても楽しめ、見ていて飽きないユリです。奥ゆかしささえ感じます。この花の開花は夏の楽しみになっています。

ウイルス病に比較的強いとされ、野生種に近いので丈夫で育てやすいです。環境が合えば鱗茎は年々大きくなって花がたくさん咲くようになります。

おすすめの使い方

カノコユリは背が高くなり花も大輪のため良く目立ちます。半日陰の場所や、木漏れ日の下に植えると風景のポイントになります。雑木の庭でも馴染みます。但し、花粉が衣服に着く恐れがあるので、通路際ギリギリには植えない方が良いです。花壇では後景向きの花です。

斜面や石積みの隙間に植えると茎が垂れて、本来の姿を楽しめます。

相性の良さそうな植物

野趣を活かすため、半日陰で育つ宿根草やグラス類、雑木等との相性が良いと思います。好む環境が近い山野草もおすすめです。カノコユリは株元を暗くしないため、背の低いグランドカバープランツの中にも植えられます。

例:シラン、ヤマシャクヤク、フウチソウ、ホスタ(ギボウシ)、リュウノヒゲ、ヤブランなど

関連情報

百合の花粉を落とす方法

ユリの花粉は肌や衣服に着くと落ちづらいです。花粉には脂肪分が多く含まれていて、こするとのびて広がってしまいます。肌についた花粉は水だけでは落ちないため、石鹼を使って落とします。衣服についた花粉を落とすには繊維に入らない内にティッシュで優しく払い落します。深く入り込んでしまった場合は脂肪分を溶かす事のできる除光液(アセトンを含むもの)や無水エタノールが有効です。酷い場合はドライクリーニングを依頼します。花粉の落とし方は、以下の日比谷花壇さんのサイト(外部サイト)が詳しく解説しています。

リンク:ユリの花粉がとれない!洋服にユリ花粉が付いた時の取り方 (hibiyakadan.com)

カノコユリを植え付ける場所は、通路から離すか、人通りの少ない場所を選んだ方が良いですね。一歩引いてこの美しい花を楽しみましょう。

オニユリ

ユリの栽培では、他にもオニユリを育てています。オニユリはオレンジ色の大きな花を咲かせ、ムカゴで増えるユリです。もしよろしければ以下の記事もご覧ください。

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