水辺のビオトープは涼し気で良いですよね。水中ポンプを活用すると池だけじゃなく小川も再現することができます。水の流れは、見た目に加えて「せせらぎの音」も楽しめます。また、水面が動くことにより酸素が水中に溶け込みやすくなり、生き物にも優しいです。
この記事はこんな方におすすめです。
- 庭に小川を作る方法を調べている。
- 水中ポンプはどう選べば良いの?
- 防水シート(ライナー)の施工方法を知りたい。
この記事では水中ポンプと防水シート(ライナー)を使った小川の作り方について、写真と図を使って解説します。水を動かすのは結構難しく、DIYレベルは上級者向けです。実際にやってみた情報をまとめましたので、作業の前に参考にしてみて下さい。
構造と完成イメージ
基本構造について
基本構造は上図のようになります。地面に溝状の水路を掘り、アンダーライナー(防水シート保護用の下地材)とストリームライナー(流れ用の防水シート)を敷いて、水中ポンプで池から水を流して循環させます。
落差(段差)は無くても良いですが、水の動きと音が表現できるのでオススメです。
基本的には防水シートで作る池の構造と同様です。石や砂利を使うと自然な見た目に近づきます。
作りたい風景をイメージする
一言に小川と言ってもモデルになる風景はいくつもあると思います。
例えば、湧き水による沢筋、森の中を穏やかに流れる小川、草がせり出した水路といった感じで、具体的に作りたい風景のイメージを思い描きましょう。
イメージを元に、落差の有無や高低差、カーブ、傾斜を具体的に決めます。
落差や滝によって水の動きを増やすと沢の雰囲気になります。土を盛るなど、周囲の地形にも工夫が必要になります。
落差を設けない場合、直線だと人工的に見えるので、流れを蛇行させ、幅にも変化をつけると自然らしくなります。流れの中に石や水生植物を配置するのも自然らしい演出になります。
参考例
以下は山の細流をイメージして作った小川です。この例を使って、作業の流れを解説します。(参考ショート動画/11秒・音声あり)
水の流量は少ないですが、落差(段)を3ヶ所設けて水の動きと音を演出しています。バードバスにもなっていて、小鳥が水浴びにやってきます。小川の長さは約2mです。
水の循環で得られる効果
水流で得られる効果は見た目や音だけではありません。一番のメリットは酸素の供給です。酸素は水の表面が動くことで水中に溶け込みます。小川はエアーポンプでブクブクと空気を送るよりも効果的に酸素を溶けこませることができ、水中で呼吸する生き物が暮らしやすくなります。
また、水の流れは汚れを分解する有用なバクテリア(微生物)の働きを活発化させます。バクテリアは生き物に有害なアンモニアを害の少ない硝酸塩に変化させ、水の浄化に繋がります。熱帯魚などのアクアリウムで使われる濾過装置と同じ分解プロセスを再現することができます。川底に砂利を敷くと表面積が増え、更にバクテリアが定着しやすくなります。
必要な材料と道具
主な材料
小川作りには、以下の材料を使用します。
- 水中ポンプ
- ストリームライナー(防水シート)
- アンダーライナー(保護シート)
- 配管材
- 石、砂利
- 水生植物や苔
水中ポンプ
コンセントに繋ぐタイプの屋外用水中ポンプを用意します。私は「ビオガーデン800(メーカー:タカショー)」という製品を選択しました。水中ポンプの中にはソーラーパネルを電源とするものもありますが、動作が不安定でパワーも弱いので、流量や揚程(高低差)を求める場合には不向きです。また、アクアリウム向けのポンプは屋内用のため、屋外で使用するのはやめましょう。
ポンプの決め方としては水を上側に運ぶ能力を示す揚程に余裕のあるものを選びます。揚程と高低差が同じだとほとんど水が流れないため、必ず数値に余裕がある製品を用いましょう。正確には「水面から吐き出し面までの高低差」と「配管等との摩擦損失」、その他細かい条件を元に数式によって計算します。
ストリームライナー(防水シート)
ストリームライナーは流れ専用の防水シート(メーカー:タカショー)です。材質はPVC樹脂で、池用シートと違って幅は広くありませんが長尺に対応しています。下地から飛び出た石等で、穴が開かないように、保護材のアンダーライナーと組み合わせて使用します。
製品は、幅2.0×長さ6.0m×厚さ0.5mm、幅4.0×長さ10.0m×厚さ0.5mmがあります。もっと短くて良い場合は、池用のプールライナー(2.0m×2.5m)でも代用できます。
アンダーライナー(保護シート)
池用と同一の製品です。ライナーの下に敷いて、防水シートに穴が開かないよう保護するクッションの役目があります。古い毛布でも代用できますが、その場合は分解されない化学繊維の物を使います。
配管材
水中ポンプの排水側の管径に合うものを用意します。簡易的な場合は水道ホース程度でも良いですが、距離が長い場合や本格的にやるなら塩ビ管を使用するのが最良です。
配管の直径は流量に影響します。なるべく太く、潰れにくいものを選択します。
石、砂利
石や砂利はお好みで、防水シートを隠すために使用します。シートが隠れると自然な見た目にぐっと近づきます。予め砂利が基材に張り付けてあるストーンライナーという製品もあります。
水生植物や苔
小川の岸にポイントで植物を植え付けると自然らしさが増します。セキショウや苔類は成長がゆっくりで扱いやすいです。
必要な道具
土を掘る作業がメインです。以下の道具を準備しましょう。
- スコップ
- 移植ゴテ(微妙な調整に便利)
- 水平器(無くてもOK)
作業の流れ
材料と道具が準備できたら、いよいよ小川作りスタートです。作業は以下の流れで進めます。
- 位置を決めて溝を掘る
- アンダーライナーを敷く
- 水中ポンプと配管を設置
- ストリームライナーを敷く
- 下地の段階で水を流す(テスト)
- 石や植物を配置
- 水を流す(本番)
位置を決めて溝を掘る
位置を出して、水の流れをイメージしながら溝を掘ります。勾配は0.5%程度(距離1mに対して高低差5mm)にします。落差をつける場合は水を浅く溜めて流れ出すようにしてもOKです。
私は池を作ってから後付けで小川を作ったため、作業がやりづらくなってしまいました。周囲の植物は後で植える方が邪魔にならず良いです。写真にあるコンクリートブロックは、後で設置する石橋の基礎になります。橋を架ける場合は下地の段階で基礎を作っておきましょう。
アンダーライナーを敷く
防水シートを敷く下地として、アンダーライナー(保護材)を敷き込みます。端部をぴったり合わせるようにして、隙間ができないように注意します。
水中ポンプと配管を設置
池の深い場所へ水中ポンプを沈め、流れの邪魔にならない場所に配管を埋めます。配管は川の外側に埋めて設置するのが基本ですが、写真では隠す前提で川の内側に配置しています。この例は流れの距離が短いため、内径25mm(外径31mm)の水道用ホースを使用しました。
流出部分は必要によりエルボを使って配管の方向を調整しましょう。写真では、90度と45度を組み合わせています。
注意点としては、冬季の凍結があります。地中埋設であれば凍りにくいですが、露出していると凍結する可能性が高いです。露出配管の場合、必要により配管用の保温材を使用してください。私の場合、冬期は越冬する生き物のために水を動かさない方針で、冬季はポンプの電源を切っています。
ストリームライナーを敷く
アンダーライナーの上にストリームライナーを敷きます。ライナーの仕上がり具合が水の流れ方を決めます。
水はライナーを伝って流れますが、流れ落ちる箇所の処理はライナーの端材を重ねて水が落ちるように導くと、水の動きと音を演出できます。
下地の段階で水を流す(テスト)
ストリームライナーを敷き終わったら、全体を仕上げる前にテストとして水を流してみます。石等で仕上げてからのやり直しはかなり大変なので、手戻りにならないよう先にチェックしましょう。イメージに合わない箇所や、水が溢れて漏れる箇所を修正します。段差部分やシートを重ねた箇所は漏水しやすいので、念入りにチェックします。
石や植物を配置
ここまで進むと仕上げです。石や砂利を使ってライナー及び配管を隠し、自然な見た目にします。流れの脇に水生のコケ類や水生植物を植え込むと、それっぽくなります。特にコケはおすすめで、石に着生すると見た目の自然度が大幅にアップします。シノブゴケ、コツボゴケ等、水気を好む種類が向きます。
この例では更に石橋をかけ、小川を渡れるようにました。川幅が狭いのでまたぐ事もできますが、橋があると川の真ん中から眺めることもできて楽しいです。
水を流す(本番)
作業はこれで終了です。池の水位が異常に減ったりしないか観察し、問題が無ければ完成です。石をつたって水漏れする可能性もあるので、半日程度は水位の変動をチェックした方が良いでしょう。
まとめ
この記事ではシートを使った小川の作り方について解説しました。最後に要点をまとめます。
- 水中ポンプは揚程に余裕のある製品を選ぶ。
- 落差の部分はライナーの端材を重ねて水の動きを出す。
- 仕上げ作業の前に水を流してテストする。
- 完成後は池の水位の動向に注意する。
小川は池の水の浄化にも役立ち、見た目でも音でも楽しめます。上級者向けではありますが、お庭でせせらぎの音が聞きたい方はぜひ挑戦してみて下さい。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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