畑にまく石灰は苦土石灰や消石灰が有名ですが、中には有機石灰という種類もあります。有機石灰について、以下のような疑問はありませんか?
- 他の石灰と何が違うの?
- 使い方は消石灰や苦土石灰と一緒?
- 石灰なのに混ぜてすぐに植えても平気なの?
有機石灰は効きがゆっくりで、家庭菜園で使いやすい資材です。私のミニ菜園でも使っています。
この記事では、有機石灰に注目して、他の石灰資材との違いや使い方について解説します。
有機石灰とは
- 有機石灰の原料と成分
- 有機石灰は土壌改良材&肥料
有機石灰の原料と成分
有機石灰の主な原料は牡蠣やホタテの貝殻、卵の殻、貝化石等で、製品によって違いますが、どれも自然由来です。食品製造の副産物をリサイクルした製品もあり、エコな資材と言えます。
主成分は炭酸カルシウムであり、化学的に安定している物質です。
土が酸性に傾いている時だけ少しずつ溶け、中性の場合にはほとんど溶けません。
有機石灰は土壌改良材&肥料
主な用途は酸度を調整する土壌改良材で、微量要素(ミネラル)を補給する肥料効果もあります。
基本的には、他の石灰系資材と同じ目的で使用することができます。
窒素、リン酸、カリの三大栄養素は含まれていませんので、別の肥料と合わせて使用します。
有機石灰の効果
有機石灰には、以下の効果があります。
- 酸性土壌の緩和
- カルシウムの補給
- 団粒構造化
酸性土壌の緩和
他の石灰類と同様にアルカリ性で、酸性土壌を中和する効果があります。
雨の多い日本では、土壌のアルカリ成分は徐々に失われて、土が酸性に傾きやすいです。
植物の多くは中性~弱酸性の土を好みますので、酸性の土に混ぜることで、丁度良いpHに調整する事が出来ます。
カルシウムの補給
カルシウムは植物が必要とする微量元素の一つで、根を強くし、葉緑素の形成促進効果があります。不足すると欠乏症状が出て生育が悪くなります。
カルシウムの欠乏は、肥料をあげ過ぎて窒素過多となった場合に起こりやすいです。
団粒構造化
有機石灰には、カルシウム以外の有機物も含まれていて、微生物の餌となり、土の団粒構造をつくるための手助けになります。
堆肥ほどではありませんが、補助的に土をふかふかにする効果が期待できます。
他の石灰との違い
有機石灰は他の石灰資材と比較すると、以下の違いがあります。
- 比較表で見る性質の違い
- 混ぜてすぐ植えられる
- 矯正効果は強くない
- 微生物を死滅させない
- 効き目が長い
比較表で見る性質の違い
一般的な他の石灰資材と比較するために表を作りました。なお、アルカリ分の値は製品でバラツキがあるため参考値を記載しています。
呼称 | 主要成分 | アルカリ分 | 矯正力 | 原料と製法 | 備考 |
有機石灰 | 炭酸カルシウム/CaCO3 | 約35~50% | 弱~中 | 貝殻、貝化石を粉砕 | 遅効性 |
苦土石灰 | ドロマイト/Ca・Mg(CO3)2 | 約50~55% | 中 | ドロマイト(鉱物)を粉砕 | 遅効性 |
消石灰 | 水酸化カルシウム/Ca(OH)2 | 約60~75% | 強 | 酸化カルシウムに加水 | 即効性 |
生石灰 | 酸化カルシウム/CaO | 約80~100% | 強 | 炭酸カルシウムを焼成 | 即効性 |
有機石灰は、成分の純度でアルカリ分が変わり、ホタテの貝殻を原料とした製品では値が高いです。
苦土石灰は、成分にマグネシウム(苦土)が含まれます。マグネシウムも植物が必要とする微量要素の一つです。
消石灰と生石灰は強アルカリ性で消毒にも使用されます。生石灰は水と反応すると熱を発し、消石灰に変化します。
混ぜてすぐ植えられる
一般に石灰を土に混ぜる際は、化学反応の害を避けるため、堆肥と混ぜるまでに1週間、植え付けまでには2週間の日数を開ける必要があります。
有機石灰はゆっくり作用するので、熱もガスも出ず、混ぜた直後でも植え付けや種まきができます。
堆肥と一緒に混ぜても問題が無いので、混ぜ込む作業が1回で終わる点もメリットです。
矯正効果は強くない
矯正力の強い石灰は混ぜすぎると悪影響が出てしまいますが、有機石灰は害が出にくいです。
良くも悪くも酸性土壌を矯正する力は小さいため、強酸性土壌の改良には力不足ですが、
家庭菜園で継続して使う点では向いていると言えます。
微生物を死滅させない
消石灰は消毒に使われるくらいアルカリ性が強いです。素手で扱うと手荒れが起こります。
有機石灰には消毒効果はないため、土壌微生物にも優しい資材と言えます。
効き目が長い
酸性に傾くと溶けだす性質のため、成分が失われにくく効果が長く続きます。極端なアルカリ性に傾く事はなく、中性寄りになるよう必要な分だけ作用してくれる点で優れています。
有機石灰の使い方
基本的には他の石灰資材と同様に土に混ぜ込んで使用します。まずは土がどれくらい酸性に傾いているか計測し、植える作物の好むpHに合わせて使う量を決めましょう。
現状の酸度を計測
市販の測定器や試験紙で土壌のpHの値を計測します。栽培する作物の種類と栽培期間に合わせて、矯正具合を決めましょう。pH7.0が中性で、数値が下がると酸性、数値が高いとアルカリ性です。
使用量を計量して均一にまく
製品によって使用量が異なりますので、袋に書いてある使用量の目安に従って使いましょう。
私が購入した製品(アルカリ分35%)の例だと、一般の土(pH5.5~6)で500~700g/3.3m2です。酸性土(pH4.5以下)で800~900g/3.3m2です。
堆肥・元肥も一緒に混ぜる
有機石灰は堆肥や元肥と同時に使えるので、メリットを活かして一緒に混ぜてしまいましょう。作業が一回で済むのはありがたいですね。
有機石灰のココが良かった・悪かった
実際に使ってみて感じた事をまとめます。
良かった事
まず一つは、堆肥と同時に混ぜられる点です。消石灰では堆肥と同時に混ぜられないため、2回耕耘作業が必要です。有機石灰なら耕耘作業が一回で終わるため、土作りの労力が半分になります。忙しい人や、自宅と畑が離れている人にもメリットになります。
二つ目は、混ぜてから植え付けまで、期間を空ける必要がない点です。実際に、土壌を改良した当日に種を蒔きましたが、無事に発芽し育てることができました。ポット苗だけでなく、発芽した小さな芽にも影響が無い事を確認できました。
三つ目は、多く混ぜても害が出にくく、気軽に使える事です。消石灰等では資材の計量やpHの測定がとても重要になりますが、有機石灰は効き目が穏やかなため、多少いい加減に使っても問題が起こりにくいです。家庭菜園ビギナーにもオススメです。
悪かった事
気になったのは使用量が他の石灰類より多い点です。成分に含まれるアルカリ分(35%)が低かったため、消石灰(60~75%)と比較すると同じ酸度の矯正でも、面積当たりの使用量(重量)が最大で2倍程になります。家庭菜園では大した問題ではないですが、農業においては資材コストや作業量から考えて不利かもしれません。
まとめ
ここまで、有機石灰の使い方と、他の石灰資材との違いについて解説しました。最後に要点のまとめです。
- 効き目がゆっくりで、使い過ぎても害が出にくい。
- 堆肥と一緒に混ぜても問題なく、すぐ作物を植えられる。
- 炭酸カルシウムが主成分で、三大肥料分は含まれない。
- 有機質を含み、土を団粒化させる効果が期待できる。
- 即効性と消毒効果はない。
有機石灰は環境に優しくて、安全で使いやすい石灰です。気になった方は使ってみてはいかがでしょうか。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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