フウチソウについて、栽培事例をご紹介します。私の場合の育て方や、四季の様子、育てた感想等をまとめます。これから育てたい方や、既に育てている方の参考になれば幸いです。
フウチソウはそよ風でサラサラと揺れる葉が涼し気な日本原産の多年草です。私の庭ではキンウラハグサ、オウゴンフウチソウ、ベニフウチソウの3種類を育てています。半日陰で育つオーナメンタルグラスとして重宝しています。一般に鉢植えで栽培される事が多いように感じますが、コツを押さえれば地植えでも栽培できます。栽培のポイントは夏の強光を避け、水を切らさない事です。
フウチソウの特徴
夏に涼をもたらす物として親しまれてきた風鈴や吊り忍(つりしのぶ)。フウチソウも涼感を感じさせる風景を演出してくれます。漢字では風知草と書き、わずかな風でも葉がそよいで、涼し気な印象を受けます。ウラハグサ(裏葉草)とも呼ばれ、葉が付け根からねじれて裏返っている事に由来します。鑑賞性の高さから海外でもオーナメンタルグラスとして人気があります。
フウチソウは株立ち状の姿になり、茎は斜めに伸びてふんわりと横に広がります。夏になると茎の先端に細かな穂がつきます。短い地下茎を伸ばしながら芽の数を増やし少しづつ増えていきます。
基本種は緑葉で、一般には斑入り品種のキンウラハグサが良く栽培されています。他には黄金葉(オーレア)のオウゴンフウチソウ、小型で葉先が赤くなるベニフウチソウ等が出回ります。
基本データ | |
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学 名 | Hakonechloa macra |
分 類 | イネ科 ウラハグサ属 |
形 態 | 多年草(冬季落葉) |
原産地 | 日本 |
大きさ | 高さ30~40cm、幅40~60cm |
開花期 | 8~9月 |
花 色 | 黄緑(穂) |
日 照 | 半日陰 |
水 分 | 湿潤気味 |
耐寒性 | 強 |
耐暑性 | 強 |
増やし方 | 株分け、実生 |
用 途 | 庭植え、鉢植え、草物盆栽、グランドカバー |
わたしの育て方
私の庭では2017年より育て始め、追加しながら計3品種、6株あります。地植えを基本として、1株だけ鉢植えで育てています。いづれも3号ポット苗で入手しました。
草丈(長さ)は地植えにすると鉢植えに比べて大型になります。キンウラハグサ(斑入り品種)の場合、鉢植えが茎の長さ40cmに対して、地植えでは60cm程になっています。茎が直立しないので、単純な高さは40cmほどです。なお、オウゴンフウチソウは若干小型のようでキンウラハグサに比べると一回り小さく収まっています。
栽培環境
フウチソウは半日陰で土壌水分の多い環境を好みます。また、水はけの良さも必要です。
私の庭ではなるべく半日陰や木陰になる場所を選んで植えています。夏の直射日光は強すぎて葉焼けを起こす事があります。特にオウゴンフウチソウは強光に弱いように感じます。キンウラハグサは耐性が強くほとんど葉焼けしていません。普及している定番の種類は丈夫なようです。
植え付け時は堆肥を混ぜて保水性と排水性を改良しました。元々は粘土質を多く含む土ですが、ミミズが増えたおかげか団粒構造になって水はけも良くなってきたと思います。その他、有機物補給と乾燥対策として堆肥と剪定枝チップによるマルチングも毎年行っています。
水やり
フウチソウは乾燥が苦手で、水切れすると弱ってきます。根付いていますが、夏季だけは水やりを気にしています。葉が丸まってきたら水切れのサインです。早めに水を与えれば枯れ込まずに元に戻ります。
肥料
肥料は特に与えていません。ただマルチングに使う堆肥に含まれる養分は多少なり吸収しているはずです。小型に保つ場合は肥料を控えめにした方が良いと思います。
病気・害虫
目立った病害虫は特に出ていません。
お手入れ
必要な作業は冬の切り戻しと、数年置きの株分けです。
切り戻しは、枯れた茎を切り取る作業で、12月から3月の間に行います。冬枯れしてから芽が伸びる前に行えば問題ありません。
株分けは、芽が込み合った時や、増やしたい場合に行います。掘り返してスコップで土ごとザックリ割るか、土を落として地下根を切り分けます。新芽が出る前で、寒さの和らぐ3月頃が適期です。
四季の生育状況
四季の様子はキンウラハグサの写真を用いてご紹介します。
春の様子(3~5月)
芽出しは4月頃です。尖った細い芽がほどけて葉が伸びてきます。茎を成長させながら各節に葉をつけていきます。
5月に入ると新しい葉が生え揃い、最も美しい時期に入ります。キンウラハグサとオウゴンフウチソウは葉色が明るくて目立ちます。
夏の様子(6~8月)
7月後半に入ると、ほわほわとした穂が出てきます。目立つものではありませんが、涼し気な雰囲気は高まります。この穂は冬枯れするまでずっと残ります。
秋の様子(9~11月)
寒さに当たり始めると、葉は淡いオレンジ色に紅葉します。季節の移ろいを感じさせてくれます。
冬の様子(12~2月)
冬になると葉と茎は茶色くカサカサになって枯れます。冬枯れの姿もなんだか風情があります。私は少し楽しんでから、春の芽出し前までに地際で刈り取っています。この頃には株元に先の尖った芽が見えます。寒さには強く、防寒対策は不要です。
育てた感想など
見た目と育てやすさ
園芸品種はとても色鮮やかでカラーリーフとして存在感があります。リーフ物として多くの植物に馴染みます。密生すると雑草が生えにくくなり、グランドカバーとしても利用できます。また、オーナメンタルグラスとしても優秀で、半日陰に向いたグラス類は種類が少ないためぜひ取り入れてほしい植物です。
生育旺盛で栽培は難しくないですが、水分の要求量が多いので水切れだけは注意が必要です。地下茎は生長が遅いため扱いやすいと思います。成長点の広がりは1年でせいぜい10cm程度です。
おすすめの使い方
和風庭園や里山ガーデン、ナチュラルガーデンに向きます。群生させると草原のようになります。元々が山間部の岩の間に生える植物なので、ロックガーデンや石積みの隙間に植えると垂れる姿を最大限に活かせます。斜面の植栽にも向いていると思います。
相性の良さそうな植物
和を感じる植物に合います。栽培環境を合わせるため半日陰を好む植物と組み合わせるのがおすすめです。
例:アスチルベ、ギボウシ、キョウガノコ、ミヤマオダマキ、ヤマアジサイ、ヤマシャクヤク
関連情報
オウゴンフウチソウ(黄金風知草)
葉に模様が無く全面が明るい黄色一色の品種です。普及種のキンウラハグサよりもさらに明るい印象があります。葉に日光が当たると少し反射して輝いて見えます。この鮮やかな葉色は夏にはやや黄緑になりますが、それでも十分明るい色味を保ちます。
性質はキンウラハグサより少し弱く、一回り小型で、葉焼けしやすいところがあります。庭植えにしてみたところ、葉焼けは起きていますが栽培できないほどではありませんでした。葉が良く茂り順調に増えています。
ベニフウチソウ(紅風知草)
緑葉をベースに葉の中間から先端にかけて赤く染まる品種です。初夏の頃が特に赤色が良く出ます。性質は弱めなのか、小型で成長が遅いです。庭植えにしましたが上手く育たず、他の植物に埋もれてきました。鉢植えで育てた方が良さそうな品種です。
こぼれ種から芽生えたフウチソウ
フウチソウは実生で増やす事も可能です。発芽率は良く、こぼれ種でも多数の芽が生えてきました。発芽直後でも葉色の区別は可能で、緑葉と黄金葉の数が同じくらいありました。緑葉の株は先祖返りしたようです。斑入りの判別は大きくなるまで難しく感じます。株分けができるため、種子で増やすメリットはあまり感じませんが、どんな姿に育つのか興味が沸いてきます。
この後様子を見ていると、成長に差が出ました。当然かもしれませんが、葉緑素が少ない黄金葉の方は成長が遅く、緑葉の方は成長が早かったです。葉は裏表が逆ですが、成長については素直な結果でした。
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