アスチルベについて、栽培事例をご紹介します。私の場合の育て方や、四季の様子、育てた感想等をまとめます。これから育てたい方や、既に育てている方の参考になれば幸いです。
アスチルベは日陰でも花が咲く貴重な宿根草です。栽培のポイントは夏の強光と土の乾燥を防ぐ事です。湿った土を好むので、夏の水切れに注意しましょう。
アスチルベの特徴
アスチルベは梅雨時にホワホワとした花を咲かせる宿根草です。非常に細かい花が多数集まって咲き、遠くからでも目立ちます。葉は数回に分かれる複葉型です。
名前の語呂から「明日散るべ」を連想するかもしれませんが、花期が短いわけではなく、これは属名「Astilbe」が名称として呼ばれている事に由来します。販売されているのは、ヨーロッパを中心に育種された園芸品種です。日本に自生する原種のチダケサシ(Astilbe microphylla)やアワモリショウマ(Astilbe japonica)、アカショウマ(Astilbe thunbergii var. thunbergii)、中国に自生するアスチルベ・シネンシス(Astilbe chinensis)といった複数の種が元になっています。このレポートでは園芸品種のアレンジー種(Astillbe ×arendsii)を扱っています。
基本データ | |
---|---|
学 名 | Astillbe ×arendsii |
分 類 | ユキノシタ科 チダケサシ(アスチルベ)属 |
形 態 | 多年草(冬季落葉) |
原産地 | 東アジア(日本、中国、朝鮮半島)、北アメリカ |
大きさ | 高さ20~80cm、幅30~40cm |
開花期 | 5~7月 |
花 色 | ピンク、白、赤、紫 |
日 照 | 半日陰~日陰 |
水 分 | 湿潤 |
耐寒性 | 強 |
耐暑性 | 中 |
増やし方 | 株分け |
用 途 | 庭植え、鉢植え、草物盆栽 |
わたしの育て方
私の庭では2016年~2021年にかけて育て始め、現在は4品種あります。花付きは良く毎年花を咲かせています。花の高さは品種により差があり、40~80cm程度まで育ちます。一番最初に植えた品種は生育が衰えて、5年目に枯れてしまいました。
栽培環境
落葉樹の木漏れ日が当たる半日陰に地植えにしています。夏は直射日光が長く当たると葉が痛みます。
導入当初は日当たりに植え付けていましたが、毎年のように水切れするので、強い光を避け、水の乾きにくい半日陰に移動しました。移動後は順調に育っていて、適地に植える事の大切さを改めて実感しました。
土は水はけと保水性の良い土壌を好みます。植え付け時は、保水性を高めるためにバーク堆肥を混ぜ込み、毎年堆肥を撒いて有機物を補給しています。
水やり
乾燥がかなり苦手で、庭にある草花の中で一番最初に水切れします。乾燥すると葉がチリチリになって弱ってしまい、慌てて水をあげても回復しにくいです。地植えでも、夏場で地面が乾く時は2~3日に一回水やりをしています。乾燥防止のため、年に一度、剪定枝をチップにしてマルチングを行っています。
肥料
春に緩効性肥料を適量与えています。
病気・害虫
花茎が伸びた頃、蕾にアブラムシがつきます。アスチルベの蕾は見た目が小さなツブツブなので、同様に小さいアブラムシは気にかけていないと見逃しやすいです。
お手入れ
株が込み合ってきたら株分けを行います。私はまだ分けるほど増えていません。花後は種ができるので、花茎の切り戻しを行います。冬は地上部が枯れるので、枯葉を取り除きます。
四季の生育状況
春の様子(3~5月)
4月上旬、地温が上がってくると新芽が動き出し葉が茂ってきます。5月には花茎が伸び始めて蕾が見えてきます。花茎はこの後長く立ち上がっていきます。
夏の様子(6~8月)
6月に入ると開花期を迎え、6月下旬まで咲き続けます。花は下から上に向かって咲いていき、開花期間は1か月程度です。
品種によっては、開花期の終盤は色が変化します。‘シスターテレサ’は色が濃くなりました。
7月に入ると小さい実(種)がたくさんできます。株が体力を消耗するので、不要なら切り取っておいた方が良いです。花茎についた葉は光合成で養分を貯えるために残しておきます。梅雨明け以降は水切れに注意します。
秋の様子(9~11月)
秋が深まると葉が枯れ始めます。種が熟す時期に入ります。採取した種は冷蔵庫で保管しておき3月に撒きます。発芽率が低いのか、まだ芽が出た事はありません。
冬の様子(12~2月)
冬になると地上部は全て枯れます。植えた場所がわかりにくくなるので、誤って掘り返さないよう位置を覚えておきます。特に株分けを予定している場合は目印を残しておくと便利です。
寒さには強く霜が当たっても平気です。
育てた感想など
見た目と育てやすさ
決して派手な花ではありませんが、花と葉が繊細で独特の美しさがあります。ナチュラルな雰囲気もあって、他の植物とも馴染みます。
乾燥に弱いのが難点ですが、栽培困難という程ではありません。夏に水やりの手間をかけられれば維持できます。日陰の庭でも花が楽しめる貴重な宿根草です。
おすすめの使い方
日陰向きの植物で、シェードガーデンに向いています。ナチュラルガーデンにも合うと思います。白や薄いピンクの品種なら和風庭園でも馴染みます。品種を1~2種に絞って群落にするとセンス良く見せられます。葉の高さが低いため、前景~中景に植えると良いです。大型の品種は中景~後景向きです。
相性の良さそうな植物
半日陰を好む植物と合わせると良いでしょう。水を好む種類とは特に相性が良いです。
アジュガ、イカリソウ、クリスマスローズ、ティアレア、フウチソウ、ホスタ(ギボウシ)、ホタルブクロ、ヤブラン、ヤマアジサイ、リグラリアなど
関連情報
栽培している品種の紹介
庭では以下の品種を育てています。
- ‘アメジスト’
- ‘シスターテレサ’
- ‘ミルク&ハニー’
- ‘サンダー&ライトニング’
アスチルベ ‘アメジスト’
2019年より栽培しています。花色は紫で、品種名は花色のイメージを上手く表していると思います。高さは50cm程になります。当初は日向に植えて枯れかけましたが、半日陰に移動したら調子を取り戻してくれました。
アスチルベ ‘シスターテレサ’
2021年より栽培しています。花色はピンクです。咲き始めは淡いピンクで、咲き進むと濃くなります。高さは40cm程になります。花穂が複数立ち上がってボリューム感が出てきました。
アスチルベ ‘ミルク&ハニー’
2020年より栽培しています。花色は薄いピンクで、優しい色合いです。高さは50cm程になります。‘アメジスト’と同様に当初は日向で育てていましたが、半日陰に移動しました。枯れる寸前からなんとか復活しました。
アスチルベ ‘サンダー&ライトニング’
2021年より栽培しています。花色は濃いピンクで、葉が他の品種より明るい色です。高さは80cm程になり、育てている中では一番背が高くなります。なぜかこの品種だけ開花が2週間くらい遅れました。
原種の自生地を訪ねる
登山中にアスチルベの仲間に出会いました。自生地の環境から上手く栽培するコツを探ります。
チダケサシ
奥多摩の雲取山に、原種の一種、チダケサシ(Astilbe microphylla)が自生していました。標高は1900m程度の地点で、環境は背の低い草やササが茂る日当りの良い草原です。周囲にはカラマツが生え、霧が出る場所に育つ地衣類のサルオガセも見られます。地形は斜面で、霧のおかげで極端に乾燥しない場所です。
原種の自生地から考えると、アスチルベは水はけと土壌水分を好み、高温が苦手なことに納得できます。栽培では山野草に近い育て方をしてあげると良さそうです。冷涼な土地では日向でも栽培できるのではないでしょうか。
コメント